9月26日、厚生労働省より、採用内定時の労働条件明示等に関する公開質問状に対する回答をいただきました!
近年、求人の内容と実際の労働条件が異なるという問題、いわゆる「求人詐欺」が社会問題化していること、2017年3月末の職業安定法改正における審議においても同問題が取り上げられています。このような状況を受けて、ブラック企業対策プロジェクトは、労働基準法15条(労働契約締結時の労働条件の明示)に関して、厚生労働省に公開質問状を提出しました。
これに対して、9月26日に、同省より回答をいただき、同日に記者会見を行いました。
弁護士ドットコムニュース「【求人詐欺】新卒内定式、労働条件の通知はあった? なければ労基法抵触の可能性も」
以下では、同省の回答のうち、重要部分を掲載します。
Q.新卒採用において、採用内定時に労働条件を明示しない企業があります。新卒採用においては、採用内定時に労働条件を明示すべきですか?
A.採用内定時に労働契約が成立する場合があります。この場合、労基法15条に基づき労働条件を明示すべきです。確かに、企業によっては、人事の事情で、業務内容・就業場所が決められないということもあります。しかし、賃金等、明示できるものは明示すべきです。
Q.採用内定時に労働条件を明示しない企業がある状況に対して何か対策をとることを予定しているでしょうか?
A.どういった対応を労基として取るべきか、厚生労働省内で検討をしている段階です。2017年3月の職安法改正(求人情報の適正化等についての改正が行われた)を踏まえて検討を開始しました。
Q.労働条件明示の方法として、「就業規則~条」「就業規則のとおり」といった摘示方法をとることがあります。この場合、就業規則は交付すべきですか?
A.労働条件明示の方法として、就業規則を交付するということは認められます。これは平成11年1月29日基発第45号にあるとおりです。
Q.就業規則を交付されても自らに適用される部分が不明確であるため、労働条件を確認できない場合があります。就業規則を交付する場合は、必ず労働者への適用部分を摘示すべきですか?
A.まず、適用される条項の摘示が必要です。さらに、単に「第~条が適用されます」だけでは足りず、その条項の解説をしなければなりません。これも平成11年1月29日基発第45号にあるとおりです。
Q.いわゆる「固定残業代制度」を採用する場合には、何を明示する必要がありますか?
A.固定残業代を有効とするには、労働条件を明示する段階で、残業代と基本給の部分を区別できるようにしておくことが必要です。区別して明示していなければ固定残業代制度をとっているということにはなりません(残業代部分が基本給として扱われます)。これは平成29年7月31日基発第27号、同日基監発第1号に示しているとおりです。
Q.試用期間を設ける場合には、その有無及び期間の明示は必要ですか?
A.試用期間は、それを設けていることが分かるような形で労働条件を締結する必要があります。試用期間は、雇用契約を結べば法令上当然ついてくるというものではないからです。
Q.試用期間で賃金が変わる場合は、どこまで明示すべきですか?
A.最初の労働条件を示すべきですので、試用期間の賃金は明示すべきです。理想的には試用期間中・試用期間終了後の賃金の両方を示すべきです。なお、これは賃金に限らず、労基法15条の明示事項に入っているなら、書かなければなりません。
Q.特殊な労働時間制度(事業場外労働制(労基法38条の2)、裁量労働制(同38条の3及び4)、変形労働時間制(労基法32条の2、同4、同5)、フレックスタイム制(同条の3))の適用対象であるか否かは明示すべきですか?
A.労働条件通知書のモデル(厚生労働省作成)に記載欄が設けられているように、記載することが望ましいです。また、書面上でこれらを示さず、後ほど適用されていたと会社が主張する場合は、労基法15条第2項の即時解約ができます。